先週、今週と、2週続けての夜咄懐石の仕事。
ちょっと長いですが、夜咄の茶事にご案内します。
落ち紅葉が鮮やかな露地
席入りの時分にはとっぷりと日が暮れ
石燈籠にも灯が入りました。
夜咄は電気の照明は一切使わずに、すべて灯火です。
軸(待合) 『
和(輪)すれば万事成す』
夜咄ならではの風情
軸(本席)
春有百花秋有月
夏有涼風冬有雪
若無閑事挂心頭
便是人間好時節
春に百花あり 秋に月あり
夏に涼風あり 冬に雪あり
若し閑事の心頭に挂(かかる)こと無くんば
すなわち是れ人間の好時節
春は百花繚乱として咲き誇り、秋は月が冴えて美しい.
夏はまた炎暑の中の涼風が何とも言えず心地よい.冬も雪景色の風趣がすてがたい。
春夏秋冬それぞれに趣があって誠に結構なものである。
だから閑事、つまらぬことにあれこれ思い煩う事が無ければ、
春夏秋冬いつでも人間にとっての好時節である。
「前茶」「初炭」 粛々と...
そろそろ御飯を炊きます。
今回はお祝いも兼ねての茶事なので、
少し豪華になりました。
蒸らす前の少し芯が残る「煮え花」の御飯を。
汁は通常「味噌汁」ですが、あえて「清汁」に...
「香深昆布」という甘味があり、香りが良い出し昆布が手に入ったので、
是非、ひきたての美味しい出し汁をそのまま味わって頂きたいと思い、
御亭主にも快諾していただきました。具は「粟麩」「大黒占地」
向付は『
鯛蕪』
夜咄という事で先ずは温まっていただきたい。
季節ですので、どちらも香りは柚子としました。
席中に柚子の香りが満ちます。
煮物椀は『
牡蠣と海老芋』西京味噌仕立
一番出しをしっかり効かせた味噌仕立てでさらに温まります。
隠し味に「酒粕」を少々。香りは芥子です。
焼き物は『
鰆幽庵焼』
ここで再び柚子の風味がさりげなく香ります。
炊合せは『
飛龍頭・堀川牛蒡・菜の花』
飛龍頭には「百合根」「干し椎茸」「車海老」を、
柔らかく炊いた堀川牛蒡と春を予感させる菜の花を
生姜の香りで。
和え物は『
鮟肝と平茸の胡桃和え』
酒豪揃いということなので酒に合うような和え物としました。
「菊菜」がアクセントとなっております。
箸洗いの吸物は『
梅肉と寿海苔(水前寺海苔)』
一週目の八寸 『
唐墨・ちしゃとう』
唐墨はもちろん自家製、ちしゃとうは味噌漬け。
二週目の八寸 『
鮑・ちしゃとう』
鮑は柔らかく姿煮に。
一週目の席は男性のみ四名で上戸ということで、
強肴として『
酒盗』を菜の花の軸を添えてお出ししました。
香の物 『
千枚漬け・共菜』
最初と最後に季節の「蕪」をもってきました。
主菓子 『
蒸し饅頭』
お馴染みとなりました自家製「薯蕷饅頭」を蒸したてのあつあつで。
中立後、改めて席入りです。
夜咄では、後座の花は入れずに「払子」や「盆石」を飾ります。
いざ、濃茶。
話は尽きず、夜咄はゆるゆると...